小説・失くし物 第九話 1
寛子はパートに出勤していた。スーパーのレジ係だった。
いつもはなしかけてくれる同僚のおばさんが、いつもどおり
声をかけてきた。「聞いたわよ!おめでたなんだって?」
おばちゃんはにこにこしながら聞いてきた。「あたしの若い
頃を思い出すよ…初産のときはたいへんだったわあ。
それでもね、子を授かるっていうのはね、おんなにとっては
ある意味天命だからね、神様の決めたことには逆らえないわねえ。
まあ、うちの子もちぃちゃい時分はかわいかったさ、そりゃあもう
かわいかった」おばちゃんの話は尽きることなくつづく。
「いまじゃ立派なわんぱく坊主でね、来年受験だとさ。近頃の
子供は大変だねえ…」要は、子供を設けることが女にとって
いかに重要で大切か、ということが言いたいらしい。
寛子はいつも通り半分くらい聞き流しながら、おばちゃんに
心で感謝しながら、今頃会社で働いているはずの夫に
思いを馳せるのだった。。。
いつもはなしかけてくれる同僚のおばさんが、いつもどおり
声をかけてきた。「聞いたわよ!おめでたなんだって?」
おばちゃんはにこにこしながら聞いてきた。「あたしの若い
頃を思い出すよ…初産のときはたいへんだったわあ。
それでもね、子を授かるっていうのはね、おんなにとっては
ある意味天命だからね、神様の決めたことには逆らえないわねえ。
まあ、うちの子もちぃちゃい時分はかわいかったさ、そりゃあもう
かわいかった」おばちゃんの話は尽きることなくつづく。
「いまじゃ立派なわんぱく坊主でね、来年受験だとさ。近頃の
子供は大変だねえ…」要は、子供を設けることが女にとって
いかに重要で大切か、ということが言いたいらしい。
寛子はいつも通り半分くらい聞き流しながら、おばちゃんに
心で感謝しながら、今頃会社で働いているはずの夫に
思いを馳せるのだった。。。
失くし物 第八話 1
亮次は自分のデスクの前に座っていた。部長の席とはかなり離れた、
いわゆる亮次は一昔前流行っていた、窓際族といってよい扱いだった。
経理課である。亮次は簡単な演算処理作業をしていた。若い同僚達の
会話がひそひそ聞こえてくる。(あの秘書課の子かわいくね〜?)
(週末飲み行こ!)くだらない、と亮次には思えるのだが正直のところ
彼らの方が将来有望なのは事実なのであった。(やつらにはわからないだろう)(家庭をまもり、子を育み、伴侶を愛する大切さを…)
亮次はそれが真実の幸福と信じて疑わない。それで亮次は自分のいまの
境遇の悪さを納得させていた。亮次はそれでよかった。
いわゆる亮次は一昔前流行っていた、窓際族といってよい扱いだった。
経理課である。亮次は簡単な演算処理作業をしていた。若い同僚達の
会話がひそひそ聞こえてくる。(あの秘書課の子かわいくね〜?)
(週末飲み行こ!)くだらない、と亮次には思えるのだが正直のところ
彼らの方が将来有望なのは事実なのであった。(やつらにはわからないだろう)(家庭をまもり、子を育み、伴侶を愛する大切さを…)
亮次はそれが真実の幸福と信じて疑わない。それで亮次は自分のいまの
境遇の悪さを納得させていた。亮次はそれでよかった。
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